退職理由が会社都合であれば、自己都合による退職の場合に比べて、失業保険(失業手当・基本手当)は有利になります。
でも、実は「会社都合」でない「正当な理由のある自己都合退職」の場合も失業保険をもらうとき有利になるって知っていましたか?
そもそも、退職理由などを証明する書類は会社が作成するわけですし自分の主張が通らない場合や会社が自分勝手に証明書を作る可能性だってあります。(※会社側は、社会的立場やハローワークからの印象を悪くするのを嫌いますし、助成金がもらえなくなる場合があります。また、会社の規約によっては退職金の割り増しがある場合があります。)
今回は、会社側が「会社都合の退職」であることを認めてくれない場合の対応と「会社都合だけじゃない正当な自己都合退職」の条件について解説していきます。
この記事の結論は、
- 自己都合退職でも「正当な理由のある自己都合退職」は、失業保険で有利になる
- 会社が、あなたの主張を無視した退職理由にしていても大丈夫
- 記事中の項目に当てはまったら、ハローワークにきちんと伝えよう
1.失業保険は会社都合が有利、自己都合でも大丈夫!
失業保険とは?自己都合退職でももらえるの?
失業保険とは「雇用保険」や「失業手当」「基本手当」とも呼ばれており、退職後、次の仕事が見つかるまでの間、ハローワークから定期的にお金がもらえる制度のうちの1つが失業保険(失業手当)です。※雇用保険に加入している人しかもらえません。
アルバイトなどで生計を立てながら求職活動まで行うのは、大変困難ですので「求職」をした場合には一定額をハローワークが払ってくれるわけです。
そして、雇用保険に加入している人であれば、どんな理由で退職しても(自己都合・会社都合)失業手当をもらうことができますが会社都合で退職をした場合の方が優遇される制度になっています。
会社都合退職で有利になる3つのポイント
会社都合の退職をした場合は、自己都合退職をした場合と比較して3つの点で有利です。
一方で、会社都合の退職をしても1日当たりの失業保険(失業手当)の額は、変わりません。
会社都合による退職によって有利な点
- ①給付制限期間がない!(最重要)
→自己都合退職の場合は、退職後1~3か月失業保険がもらえない。 - ②会社に勤めていた期間が短くても、失業保険がもらえる。
→自己都合の場合、最低12か月だが。会社都合の場合は、最低6か月。 - ③失業保険をもらえる日数が多くなる。
→自己都合のなら90~150日分なのに対し、会社都合は、90~330日分。
会社都合と自己都合の退職で変わらない点
- 1日当たりの失業保険の額は変わらない。
- 手続きの方法、期間、窓口は変わらない。
正当な理由のある自己都合退職は、会社都合退職として扱われる
失業保険においては、単に自己都合というだけで判断されるのではなく、正当な理由のある自己都合退職であった場合は、会社都合退職と同様に有利なものとして扱われる制度になっています。
2.自己都合と会社都合って具体的にどんなものをいうの?
退職の理由は、大きく「自己都合退職」と「会社都合退職」に分けることができますが、ここでは、自己都合を「自己都合退職」「正当な理由のある自己都合退職」の2つに分けた計3つの具体例を挙げていきます。
①自己都合退職の具体例
自己都合退職は、自分が「辞めたい」「辞めてもいい」「退職させられるだけの悪いことをした」場合に退職をした場合などのことを言います。②で解説しているとおり「辞めなければならない理由がある」「仕事を続けたいけど続けられない」場合は、自己都合退職とは呼びません。
大きな失敗(犯罪等)をして、懲戒免職になった人
- ・会社のお金を横領したので、依願退職をした
- ・飲酒運転をして事故を起こしたので、懲戒免職になった
- ・退職させられるほどの大きな損害を会社に与えた
契約期間が満了し、契約が終了した人
- ・契約社員(期間のある契約)で、2年間の約束だった契約が終了した
→自分も退職となることに同意した。
早期退職の取り扱い
- ・50歳から募集されていた、早期退職制度に応募し退職をした
- (※臨時的な希望退職制度を活用して、退職した場合は会社都合退職となります)
②正当な理由のある自己都合退職の具体例
正当な理由のある自己都合退職は、退職の理由は自分にあるけど「辞めなければならない理由がある」「仕事は続けたいけど続けることができない」場合などを言います。
この退職は「特定理由離職者」と呼ばれ、失業保険をもらううえでは、会社都合退職と同様に有利な退職理由として扱われます。
ケガや病気で仕事を続けられない人
- ・建設業で働いていたが、足を悪くして仕事を続けられなくなった
- ・病気と診断されたので、療養に専念するために仕事を辞めることにした
結婚等(妊娠、育児、介護)をしたため、退職を余儀なくされた人
- ・結婚を機に相手と同居することになったが、職場が遠くて仕事に通えなくなった
- ・育児をするうえで仕事を辞めざるをえなかった
- ・上司に転勤を命じられたが、家族と別居(単身赴任)はできないので退職した
- ・親族の介護と仕事を両立することができなかったので退職した
契約の更新を希望したにも関わらず、更新がされなかった人
契約(採用)をしたとき「契約を更新する場合がある」とされていた人が、結果的に会社が契約を更新しなかった場合(あなたは更新を希望した)。
③会社都合退職の具体例
会社都合退職は「会社が辞めてほしい」「会社が間違ったことをしているから仕事を続けられない」場合などのことを言います。
会社が倒産した人、解雇された人・契約の更新がされなかった人
- ・ある日、会社へ行ったら倒産していた(差し押さえを受けていた)
- ・会社の経営が傾き、リストラとなった
- ・3年間の契約で採用されたのに、2年間で契約終了と言われた
- ・契約期間が終了するにあたって、契約の更新をしてくれると言っていたのに更新されなかった
- ・3年間以上契約社員として採用されていたのに、契約を更新してもらえなかった
パワハラ・セクハラを受けた人、残業をたくさんさせられた人
- ・上司から嫌がらせを受けており、仕事を続けることが難しい
- ・同僚や部下から無視され、仕事を続けることが難しい
- ・お客さんからセクハラを受けているのに、会社が対処してくれない
約束の給料をもらえなかった人、会社が契約に違反しているとき
- ・残業をしたのに時間外手当を支払ってもらえない
- ・1か月の時間外労働が100時間を超える。2か月の平均時間外労働が80時間を超える。3か月の平均時間外労働が45時間を超える。
- ・働いた分の給料の2/3以下しかもらえていない。急に給料が85%以下になった。
- ・採用されたときの契約内容と実態が違う
(時間外労働がないはずなのに、時間外労働がある。給料形態や雇用形態が約束と違う) - ・会社が法律を違反する営業や経営をしている
- (売ってはいけない部位の食材を売っている。犯罪で利益をあげている)
臨時の希望退職制度に応募した
会社の規約などにある早期退職制度ではなく、臨時的な希望退職者を募っている場合の退職
職場の人が一斉に辞めた場合、会社が休業・移転した場合
- ・会社に勤めている人の1/3以上が一斉にやめてしまった場合
- ・経営不振などにより、会社が3か月以上の休業をした場合
- ・事業所の移転により、職場が遠方になることから離職した場合
3.会社が勝手に自己都合で報告しても退職理由は変更できる?
会社が、評判が悪くなることや補助金がもらえなくなることを恐れて、あなたの退職が会社都合退職であることを隠す場合もあります。
特に「パワハラ・セクハラを受けた」「給料の未払いがある」「法律やルールに違反した営業・経営をしている」場合などは、次の就職者も来なくなりますから、あなたの思う退職理由と会社がハローワークに報告する退職理由が違ってくることもあります。
ハローワークで失業保険の手当をする際にきちんと伝えよう
会社の主張する退職理由とあなたの思う退職理由が違う場合は、ハローワークで相談することができます。しかし、あなたの思う退職理由が採用されるというわけではなく、証拠や会社側の主張などを聞いたうえでハローワークが決定することになっています。
そのため、どれだけ辛かったかをハローワークに伝えたても、証拠がなければハローワークは味方になってくれません(残念ながら、官公署は力になれません)。
4.まとめ(会社の主張と退職理由が食い違いそうなら主張しよう)
自分のせいではないのに、退職せざるを得なかった「正当な理由のある自己都合退職」と「会社都合退職」。失業保険をもらううえでは「単なる自己都合」だったのかそうでなかったのかはとても重要なポイントになります。
しかし、あなたが主張する退職の理由と会社が報告する退職の理由が食い違う場合もあります。そんなときは、ハローワークに相談をすれば味方になってもらえますが、証拠の提出が必要になります。
次の仕事こそ、納得のいく職場を見つけるためにも「自分のせいで退職したのではない」ことを証明・主張し、有利な失業保険をもらわなければなりません。
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