公務員は、大きく「地方公務員」と「国家公務員」の2つに分類されますが、同じ公務員でも、それぞれの仕事の内容や性質は全く異なります。もちろん、職場や仕事が違うのですから、当然ではありますが、就職先・転職先として本当に国家公務員を選んでよいかどうか不安になる人もいると思います。
今回は、元国家公務員(私)の国家公務員に対する私見を述べていきたいと思います。
私は、30代前後の4~5年を国家公務員(ノンキャリア、一般職)として過ごしましたので、キャリア(総合職)の当事者としての視点と管理職(事務方のトップ層)を目指すという点では経験が不足しているかもしれません。しかし、これから国家公務員になろうとする人(一般職・総合職問わず)は必ず通る道だと思いますので、参考にしていただければ幸いです。
この記事の結論は、以下のとおりです。
- 国家公務員は、総合職・一般職・専門職の3種類。
- 国家公務員の仕事における最大の特徴は「国会・議員対応」。
- 地方公共団体(市町村、都道府県)の調査や問い合わせは苦労する。
もし、就職先・転職先を「地方公務員」か「国家公務員」のどちらにするかを悩まれているようであれば、以下の記事も参考にしてみてください。(私は地方公務員の方が性にあっていました。)
1.国家公務員の職種と仕事の内容(建前上の仕事内容)
国家公務員は、約60万人いますが「一般職」と「特別職」に分けられ、それぞれ約30万人ずついます。しかし、特別職はほとんどが防衛省の職員で、その他、国会議員や国会関係者のことを指しますので、いわゆる役人を目指す場合は「一般職」になることを指します。
また、この「国家公務員の一般職」と言われる人たちは、3種類に区分されて採用され役人人生を歩むこととなり、それぞれ以下のような職務を担うこととされています…。
- ①総合職…国家公務員総合職(国総、キャリア、官僚)、中央省庁の幹部候補生
→政策の企画及び立案又は調査及び研究に関する事務を職務(仕事内容)。 - ②一般職…国家公務員一般職(国般、ノンキャリア)、中央省庁の事務方
→定型的な事務をその職務(仕事内容)。 - ③専門職…専門官(国税専門官、労働基準監督官など)
人事院国家公務員採用情報NAVI(国家公務員総合職試験総合ガイド等より)
※1…本記事では、一般職=「②一般職(ノンキャリア)」とします。
※2…「①総合職」と「②一般職」には、それぞれ事務官と技術官の2種類があります。
仕事内容は区別してもらえないが、総合職は昇進がとても早い
結論から申し上げますと、「総合職は企画、立案」で「一般職は定型業務」なんてことはありません。部署に割り当てることができる総合職は限られていますので、全部署・全係に配属できない以上は、一般職であっても必要があれば「企画・立案業務」はさせられます。
実際、担当する総合職の人に企画・立案能力があるという保障もありませんので、使える人は誰であれ使われます。ですから「一般職だったら、企画・立案には携わらなくていいんだな」なんてことはありませんので注意しましょう。
では、「仕事内容に差がないならば、採用職種ってあまり関係なのではないか」ということになりますが「昇進のスピード」が全く異なります。当然、職位(係長、補佐等)に応じて任される仕事も難しくなりますから、昇進が早い総合職は「企画・立案」といった難易度の高い仕事をする人が多くなります。
2.国家公務員に共通する具体的な仕事内容
国家公務員と一括りにいっても50近い府省庁がありますし、それぞれ専門が異なるので、共通する業務は多くありませんが「予算」「決算」「白書」「法改正」などはいずれの府省庁でも必ず行う仕事です。その中でも「地方公共団体対応」と、ある種有名な「国会対応」の占めている割合が大きくなることから、紹介いたします。
①国会対応(本府省庁のみ)
国家公務員にとっての最大の仕事の1つが「国会対応」と言っても過言ではありません。
一般の業種の方にはあまり馴染みのない業務かもしれませんが、株式会社でいえば「株主総会」、個人事業主でいえば「融資元・借入先との協議」と言ったところでしょうか。つまりは「自分の所属する組織(普段仕事をしている上司や部下、同僚)と違う属性をもつ偉い人」から質問攻めに遭う日です。
国家公務員の仕事の中でも、この国会対応(翌日の国会での質問について議員から前日に予告をされ、質問の答弁を作る業務など)が特に大変なのですが、短くても1つ答弁の作成に2~3時間はかかるのです。
もちろん、この予告が午前中に来るならいいのですが夜8時を過ぎて連絡が来る場合もありますから、必然として、時間外労働が多くなり自由な時間は減ってしまいます。
さらには、議員から質問が来る可能性があるため帰宅ができない「待機」という時間も大変長く、国会シーズン(1~6月)中の平日における自由な時間は、とても少なくなるのです。
②都道府県、市町村対応
2つめは、地方公共団体(都道府県、市町村)との連絡です。国家公務員は、政策の立案や企画を行っていますので、それらの元データとするために地方公共団体への調査を行います。また、政策が実施されたら、その政策効果を測定しますし、場合によってはその政策に対して地方公共団体から意見・批判が寄せられることもあります。
しかし、地方公共団体といっても47都道府県と1,741市町村ありますので意見・批判も多種多様で、問い合わせ等をしてくる職員の個性や態度もピンキリです。相手の立場も理解しつつ、批判をなだめるような調整弁としての役割に苦労する人も多いです。
3.国家公務員の組織体制に関する特徴
そのほか、国家公務員の組織の特徴だと感じられた事項をいくつか紹介します。
異動が早い
部署の異動がとても早いです。早ければ1年程度、遅くても3年で異動することになります。
→地方公務員だと、3~5年で異動が一般的です。
公務員官舎がある
公務員官舎がありますので、入居すれば家賃が格安で済みます。(1万円前後)
→郊外の官舎も多いですが、市町村では官舎を持たない場合の方が多いです。
パワーハラスメント
令和時代のハラスメント基準に沿って判定すれば、パワーハラスメントはあります。
→当たり前にパワハラがあるとはいいませんが、語気が強くなる人は多いと思います。
4.まとめ(国家公務員になってよかったか)
ここまで、やや否定的な経験談が多くなりましたが、辛い・嫌いで退職をしたわけではありません。私が国家公務員になってよかったか振り返ると、大変いい経験だったと思います。新しいことに取り組みたいこの性格でなければ、続けてもよかったと思いますし、収入面も恵まれていた思います。
ただ、国会対応(特に「待機」)が苦手だったというのと、努力をしても一般職では、組織のトップになれないという仕組みが退職につながったのだと思います。
国家公務員批判の記事ではありませんので、一意見としてお受け取りいただければと思います。
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