医療費の自己負担を減らしてくれる「保険証」ですが、手元にない場合や無保険の場合に病院や薬局に行くとどうなるのでしょうか。
病院や薬局(以下、病院等)の受付で「保険証を見せることができない」という点では、保険証を忘れた人と無保険の人にあまり差はありません。今回は「病院等の受付での対応」と「病院等で支払いをした後の対処法」について解説していきます。
この記事の結論は、
- 保険証が無くても、病院等で診察してもらうことはできる。
- 病院等で支払う額は、3割でなく10割。(記事中で例外についても解説)
→風邪の診察ならば、薬局での薬代を含めて大体1万円前後 - 差額の7割分は、後で社会保険や国民健康保険で手続きすれば返ってくる。
- 無保険の場合は、7割部分が返ってこない。※原則
「無保険」でも『お金が払えないことを理由に病院に行かない』といことだけは、決してしないでください。
不調を感じたということは、理由があるハズです。体からの大事なSOSを見逃さないためにも積極的に病院へ行きましょう。この記事では、無保険の人の対処方法についてもきちんと解説しています。
1.保険証がなくて、診察してもらうと10割負担
保険証がない人が病院にいっても大丈夫
医療はとても高額なので、風邪の症状を診察してもらって処方箋をもらうだけでも、本来なら1万円程度はかかります。また、入院や手術ともなれば数十万円かかることも珍しくありません。
そんなときに「あなたは、医療費の3割しか払わなくていいですよ」という証明書(カード)となるのが「保険証」です。そのため、保険証がなくても病院等に行っても全く問題ありません。
また、自分で払わなければならない3割部分を「自己負担割合」と言い、年齢や収入によって1~3割まであります。残りの7割は、病院が保険証を管理している「健康保険(健康保険組合等)」に請求します。※健康保険が負担する額は、7割とは限りません(年齢や収入によって7~9割)が、この記事では便宜上7割と記載しています。
保険証を忘れた人は、無保険扱い
病院等に行くと、受付で保険証を提出しますが、このとき病院等は、あなたが無保険かどうかを確認しています(※同時に残りの部分の請求先を登録している)。
保険証を提出した人は、医療費の7~9割を健康保険が支払ってくれるわけですが、
保険証を提出できなかった人は、健康保険が支払ってくれる保証がないのであなたに医療費の全額(10割)の請求します。
つまり、保険証を忘れた場合でも無保険の場合でも、受付に保険証を持ってきていない人は「無保険」として取り扱われることになります。
保険証が手元にないのは、失くしただけ?無保険の可能性は?
病院等で医療費を支払うときは、保険証を忘れた場合と無保険の場合は同じ取り扱いですが、無保険の場合は、原則、医療費の7割を返してもらえません。
また、あなたが無保険ではなく保険証を忘れた(手元にない)場合、病院が支払いを猶予してくれたり、即日返金をしてくれたりしますのでハッキリと受付で伝えましょう。
2.保険証を忘れた人が7割返金してもらう方法
無保険ではなく、保険証を忘れている場合や保険証を失くした場合は、病院等で支払った10割のうち、7割が必ず返金されます。つまり、最終的に病院等の受付で保険証を見せた場合の支払いと同じになるということです。
また、いずれにしても一時的に10割の支払いをしなければならないことがほとんどです。支払いが難しい場合は、正直に病院等に相談しましょう。
①保険証を忘れた・失くした人の簡単な手続き
あとで、病院へ保険証を見せに行く(即日返金)
1つ目は、医療費を10割払い、忘れた保険証を再度見せに行くことで返金してもらう方法です。
病院で保険証を忘れた場合、病院の厚意で即日7割返金してもらえることがあります。これは、あくまで病院側の厚意なので返金されず、本来の複雑な手続きが必要になったとしても病院のせいにしてはいけません。
病院に「保険証を忘れた」と伝える場合には、「あとで、保険証を見せに来れるか」が重要です。
そのため、保険証を失くしたため再発行が必要な場合などは、病院の手続き期限に間に合わないことが多いことから②の本来の手続きが必要になります。※再発行の手続きと同時に済ませるのがよいでしょう。
病院等の「あとで、」とは、
- その日中
- 1週間以内
- 月が変わるまで(1月20日に受診したら、1月31日までなど)
など、病院によってさまざまです。
病院等がこの方法を認める場合は、保険証を見せなおしに行った日に支払った7割が病院等から返金されます。申請書や口座の登録もないので、可能ならばこの方法で返金してもらいましょう。
②保険証を忘れた・失くした人の本来の手続き
病院には10割を払い、健康保険から返金してもらう(1か月程度かかる)
2つ目は、健康保険から7割を返金してもらう方法です。
病院等で保険証を見せた場合、病院等は医療費の7割部分を健康保険に請求します。しかし、あなたは病院で保険証を見せることができませんので、健康保険は病院等から医療費を請求されません。
そこで、あなたが自ら健康保険に医療費の7割を請求し、返金をしてもらうことができるのですが、この手続きには、領収書・金融口座・印鑑・保険証などが必要になります。
あなたの加入している健康保険によって、違いますので事前に確認をしてみてください。
中小企業の場合(水色の健康保険証):全国健康保険協会はコチラ
国民健康保険の場合:詳しくは、お住まいの市町村にお尋ねください。
※印鑑・保険証・領収書・振込先口座を持って、役所の窓口に行くことが多いです。
その他、大企業・共済組合の場合はホームページ等でご確認ください。
3.無保険の人が医療を受けたい場合(救済措置)
無保険の場合、保険証をもっていないわけですから、病院等で10割を支払わなければなりません。さらに、本来7割を支払ってくれるはずの健康保険に加入していないので返金などもありません。
しかし、無保険である理由や事情によっては、3割負担で医療にかかることができる場合もありますのでご紹介します。
今すぐ受診しなければマズいかどうか
あなたが3割負担で病院等に行くことができる確実な方法は「健康保険に加入してから」受診する方法です。
そして、あなたが無保険の場合に加入できる健康保険は、
- 社会保険をもつ家族の扶養に入る
- 国民健康保険に加入する
の2つのハズです。
①家族に社会保険を持っている人がいる場合
家族で社会保険を持っている人がいて、収入などの要件を満たしている場合は、社会保険の扶養になることができます。社会保険の扶養に入ると、無償で保険証が手に入りますので、社会保険の扶養になることができるなら国民健康保険より優先して選びましょう。※健康保険の扶養になることができる条件については、以下の記事で紹介していますので参考にしてください。
②家族の社会保険の扶養に入ることができない場合
社会保険の扶養になれない場合は、国民健康保険に入ることになります。
国民健康保険は、市役所に相談に行ったその日から保険証がもらえるのでその保険証をもって病院へ行きましょう。
また、日本では「国民皆保険」といって、全員が何らかの健康保険に加入していなければなりません。しかし、国民健康保険に加入する場合は、保険料の支払いが必要となりますし、場合によっては過去2~5年分の保険料を一括で支払うように求められます。
今無保険のあなたが、経済的苦しくて健康保険に加入していなかったのならば、活保護制度(医療扶助)の申請も検討してください。本当に必要であれば、医療費や健康保険料の支払いなく、病院等に行くことができます。
すぐ病院に行きたい。緊急の受診、手術などの場合
市町村や家族に相談している暇はないときに病院等に行きたい場合は、こちらの方法になります。やはり、前提としては医療費の10割を支払わなければなりませんが事情によって国民健康保険が負担してくれる場合もあります。
診療後(可能なら、診療前)すぐに市町村に相談が必要です。
無保険だったことに事情はあるか
病院等で医療を受けたあとは、すぐに市町村に相談しましょう。
市町村に相談すること、
- 無保険であること
- 病院等に行ったか?
- 病院の支払いはどうしたか(支払いにかかわらず、医療費の額)
- なぜ、無保険なのか
事情を説明すれば、既にかかった医療費の7割負担をしてくれる場合もあります。なお、忘れていた、知らなかったも理由の1つです。正直な姿勢で、本当に困っていることを市町村に相談しましょう。
また、繰り返しになりますが、
相談の結果、医療費を負担してもらえるかに関わらず、国民健康保険には加入しなければなりません。そして、場合によっては過去2~5年分の保険料を支払うことになる場合もあります。
今無保険のあなたが、経済的苦しくて健康保険に加入していなかったのならば、活保護制度(医療扶助)の申請も検討してください。本当に必要であれば、医療費や健康保険料の支払いなく、病院等に行くことができます。
4.まとめ(保険証なくても病院に行っていいけどあとあと面倒)
保険証を忘れても、失くしても、無保険だったとしても病院等で診察・手術等をしてもらうことはできるものの、病院へは医療費の全額を支払うこと(10割負担)になります。
また、受付で保険証を見せることができなくて、医療費を10割負担した場合は、病院や健康保険で手続きをすることで7割の返金を受けることができますが、無保険の場合、返金はなく10割負担のままとなってしまいます。
しかし、無保険の人が病院等に行ってしまった場合にも救済制度がありますので、病院に行き控えたりせず、無保険のままにせず市町村に相談しましょう。
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