災害がおきるたび、耳にする「罹災証明書」ですが、罹災証明書を手に入れるだけで20種類以上の支援制度を受けることができます。支援制度には、見舞金等の支給や公共料金の減免をはじめ、仮設住宅の確保など多岐にわたります。では、罹災証明書とは、一体何を証明しているのでしょうか。
- 罹災証明書ってなに?どんなことが証明されているの?
- 罹災証明書は何に使うことができる?
- どうやって手に入れたらいいの?
どのようなものか分からないまま「とりあえず、災害が起きたら『罹災証明書』を手に入れておこう」という方も少なくありません。しかし、罹災証明書の使い方や内容が分からなければ、行政などの支援を受けられずに損をしてしまうことだってあるのです。
この記事では、「罹災証明書の役割や仕組み」と「罹災証明書で受けることができる支援制度」、「罹災証明書に不服があるとき」について解説していきます。
この記事の結論は、以下のとおりです。
- 罹災証明書は「住宅」の被害の程度を証明する書類(※家財などは無関係)
- 罹災証明書が必要になる支援制度は、20種類以上
- 発災から1~2か月で、役所からもらうことができる。
- 被害の程度を、変更してもらうことができる方法は2つ。
1.罹災証明書とは?どこでもらえるの?
災害が起きたとき、行政(国・都道府県・市町村)や民間企業(保険会社、融資銀行等)では、罹災証明書を持っている人に対し、お金をあげたり料金を免除してくれたりします。
まずは、その罹災証明書とは何で、どんな場合に、どこでもらえるのかを解説していきます。
罹災証明書とは?
罹災証明書は、法律に定められた証明書であり、災害時に被災者が必要とする場合、市町村には交付する義務があります。
また、罹災証明書は「住家の被害その他…を証明する書面」とされていることから、災害によって、住家(災害時に住んでいた家)がどのくらい壊れたかを表す「被害の程度」が記載されてます。
(罹災証明書の交付)
災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第九十条の二
市町村長は、当該市町村の地域に係る災害が発生した場合において、当該災害の被災者から申請があつたときは、遅滞なく、住家の被害その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、当該災害による被害の程度を証明する書面(次項において「罹災証明書」という。)を交付しなければならない。
※罹災証明書のほかにも「被災証明書」や「罹災届出証明書」という書類がありますが、まったく違う書類となります。
※被災証明書などの書類では、受けられない支援制度などもありますので注意してください。
罹災証明書に記載される被害の程度とは?
罹災証明書に記載される被害の程度は、
「全壊」、「大規模半壊」、「中規模半壊」、「半壊」、「準半壊」、「準半壊に至らない」
の6区分いずれかで判断され、被害の程度を見極めるために被害認定調査を行います。
被害の程度は、被害認定調査で決まる
被害認定調査は、災害時に住んでいた家(以下、住家)が何%壊れているかを判断するための調査です。
市町村の職員が「住家の被害認定基準運用指針」という国のガイドラインに基づいて1棟1棟詳細に調べます。被災者の立ち合いが必要な場合もあれば、立ち合いなしで調査が終わる場合もあります。
事業所や家財の被害は、加味されない
罹災証明書は「住家」の被害のみを評価する証明書です。
大きな災害(特に、地震や水害)では、住んでいた家だけではなく庭・駐車場・倉庫、事業所、車・家具・家電など様々な財産が被害を受けます。しかし、住家以外の財産がどれほど被害を受けていたとしても住家に被害がない場合は「準半壊に至らない(一部損壊)」の判定となります。
罹災証明書をもらうには、役所へ行く
罹災証明書の請求や交付の手続きは、役所(市町村)でできます。
しかし、あなたの家に被害があったとき、それが大規模な災害によるものであれば、市町村は同時に数千棟の建物の調査を開始します。その場合、調査には膨大な時間がかかり少なくとも1~2か月はかかります。大規模な地震などであれば、6か月以上かかることもあるようです。
2.罹災証明書は何に使う?使える支援の種類は20種類以上!
罹災証明書は「被災者の支援制度を受けるためのパスポート」と言われています。つまり、罹災証明書を手に入れるだけでは意味はなく、支援制度を受けるため(災害で大きな被害があったこと)の証明書として使われるものです。
支援制度の種類と罹災証明書の使い道
罹災証明書を使った行政の支援制度は、20種類以上あります。また、行政以外にも共済保険の請求や民間企業のサービスなどにも活用されています。
支援制度は、被害の程度が大きい(全壊に近い)ほど、支援制度が手厚くなり、被害の程度が小さい(準半壊に至らない)場合は、支援を受けられない場合もあります。
また、災害の規模(その地域でどれくらいの被害があったか)などによって、支援制度を受けられるかが決まるものもありますので、以下に紹介する支援制度を参考にその時々で確認をしてみてください。
①見舞金・補助金をもらう支援制度(行政での使い道)
民間の損害保険の契約をしていなくても、大規模な災害が発生した場合には、行政(国・都道府県・市町村)から補助金などがもらえます。
①-1.災害救助法による支援
災害救助法が適用される、30万~59.5万円分の家の修理契約を行政が代行してくれます。
(※端的に言うと、家の修理代を一部出してくれます。)
ほかにも、
- 仮設住宅の準備、仮設住宅への引っ越し
- 家や周辺道路にある障害物の撤去
- 学用品の準備
などについて、行政が契約・支払いしてくれます。
(※厳密には、現金は支給されず、行政が支払いなどを肩代わりしてくれる制度です。)
①-2.被災者生活再建支援金、都道府県の独自支援制度
災害でたくさんの住家が全壊になった場合は、被災者生活再建支援法が適用され、最大300万円の現金が支給されます。
また、たとえ被災者生活再建支援法が適用されなかった場合でも、都道府県によっては、現金をもらえる制度があります。(※都道府県によっては、支援制度を作っていない場合もありますので、こちらのリンクからあなたが住んでいる都道府県が支援制度を持っているか確認しましょう。)
①-3.義援金・募金の配分(赤十字など)
大規模な災害が発生すると、日本赤十字社やコンビニ、役所の受付に募金箱が設置されます。この集まったお金は、行政を通じて被災者に届られ、生活が早く元通りになるための支援として使われます。
災害の規模によって、複数回支給されたり、配分を被災状況や罹災証明書の結果などから決定してたりする場合がほとんどです。
②公共料金や税金を減らしてもらう制度(行政での使い道)
各種税金や公共料金の支払いは、災害の規模を問わず支払いを減らしてもらえる(以下、減免)ことがほとんどです。
②-1.固定資産税の減免
固定資産税は、対象となる固定資産の価値によって決まります。
そして、災害で固定資産が被害を受けた場合、必ず固定資産の価値は下がります。そのため、減免の申請をすることでその年度の固定資産税と将来の固定資産税を減免してもらうことができます。
②-2.住民税(市県民税)・国民健康保険の減免
住民税や国民健康保険は、前年の所得を基に計算されます。昨年度並みの収入があれば、支払うことができた税金も災害などで被害を受けてしまった場合は、予定通りに支払う子はできません。
そのため、災害で被害を受けてしまったことで税金などの支払いができなくなった人は、減免をしてもらうことができます。
②-3.水道・し尿処理手数料の減免
水道代やし尿処理手数料は、あなたが使用した分だけ支払いが発生します。もちろん、使ったのであれば払わなければなりませんが、災害時は、清掃で多くの水を使ったり、ボランティアの人が使ったり、また、設備が壊れた人に貸してあげる場合などやむを得ない事情があって、使用料が高くなってしまうことも少なくありません。
このような理由から、被災した地域の使用料や手数料を減免してもらえる場合があります。
②-4.所得税や住民税における雑損控除
雑損控除とは、災害・盗難・横領によって、資産について損害を受けた場合の所得控除です。
所得控除は、所得税や住民税を減らす効果がありますので、災害によって資産に被害が出た場合は雑損控除の確定申告をすることで税金を減らすことができます。
③民間企業での使い道
共済保険や損害保険への請求
地震や水害などの災害で、住宅や家財が被害を受けた時、加入していた保険から保険金をもらうことができます。保険会社の保険に加入している場合は、保険調査員が査定に来ますが、共済保険や一部の損害保険などでは、罹災証明書の提出を求められることがあります。
銀行等の融資、利子減免
住宅ローンや事業の融資を受ける場合には、罹災証明書を提出ことによって、融資の利率が下がる場合があります。
支援制度は、被害の程度によって異なる
罹災証明書には「全壊」~「準半壊に至らない」の6段階で「被害の程度」が記載されていますが、被害の程度が大きいほど手厚い支援を受けることとなります。一方で、この「被害の程度」が小さいと支援を受けることができません。
しかし、1度判定された被害の程度は覆ることがありますので、その方法を2つご紹介いたします。
被害の程度が小さいときは、市町村へ直談判
前述のとおり、被害の程度は市町村の職員による「被害認定調査」によって決定します。しかし、この手法は大変複雑なうえ、数千棟の調査を短期間に必要とするため結果が誤っている場合もあります。(※当然、そのようなことが無いよう職員も必死ですが、やむを得ず発生してしまうものであるという趣旨)
そのため、自分が思っていた被害の程度より罹災証明書の結果が低い場合は、市町村に説明をお願いしましょう。
そのとき、以下の事項については、特に詳しく聞いてみましょう。
- 計算誤りがないか調査票を見せてもらう
- 被害が大きかった部分が、計算結果に反映されているか
- 調査員が来たとき、被害が大きい部屋を調査していたか
- 屋根や床下など、わかりにくい部分の被害はないか
それでも被害の程度に納得がいかないとき
あなたは、市町村に「再調査」求めることができます。しかし、再調査をしてもらうだけでは被害認定調査の結果は同じものになるでしょう。
そこで、再調査をしてもらう場合は立ち合い、調査票の記入などを見届けましょう。
(※調査票の計算結果を現地で算出するのは難しいので、記入を見届けるところまで。)
再調査をしてもらうときは、以下のことをキチンと伝えよう。
- 今は、清掃してしまっているが当時被害があった場所
- 修理・修繕によって、剥がした床や壁などの場所
- 一見しただけではわからない、屋根裏や床下の被害がある場所
3.まとめ(罹災証明書は、被害の程度が大事)
罹災証明書は、住宅がどれくらい被害を受けたかを証明する書類で、20種以上の支援制度の対象になるかの判断材料になります。
しかし、罹災証明書の被害の程度が小さいと、支援制度を受けることができないので、受け取ったらあなたが想定していた被害の程度であるかを確認しましょう。もし、想定より小さい結果となっていた場合、2つのコツをうまく使うことで被害の程度が大きくなる可能性があります。
支援制度を受けるために重要な「罹災証明書」と罹災証明書に書かれる「被害の程度」を基に使える支援をフル活用して、早く元の生活に戻れることを祈っております。
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