結論から申し上げますと、公務員に残業(時間外労働)がないというのは神話であり、正規職員であれば尚更ありえない話です。地方公務員の正規職員でも、少ない場合で最低10時間程度/月の残業はありますし、多い人であれば100時間、200時間という人もいます。(※部署を特定せずに平均すると20時間/月の残業はあります。)
また、国家公務員についても、もちろん残業がありますが私がいた部署の月平均残業時間は40~50時間だった一方で、隣の課の月平均残業時間は5~10時間だったのでやはりこちらも部署によって大きく開きがあります。
そこで、この記事の中では、地方公務員と国家公務員の残業と残業の実態、残業手当の有無について詳しく解説してきます。
もし、就職や転職をするにあたって、「地方公務員と国家公務員」のどちらが自分に向いているかを悩んでいる人は、以下の記事も参考にしてみてください。
1.ほとんどの正規職員には残業がある
公務員の残業は、完全に「部署による」としかいいようがありません。しかし、地方公務員全体の月平均残業時間は13.2時間(年間約158時間)ですので「平均すれば、1日1時間程度の残業」がある程度です。
また、国家公務員(本府省・霞が関)は月30.0時間(年間約360時間)、民間だと月12.8時間(年間約150時間)ですので民間と地方公務員の平均残業時間を比較すると大差はありません。
公務員の残業って何しているの?公務員が残業をする理由
公務員にも達成すべき目標はありますが、いわゆるノルマはありません。一方で、法定業務と任意業務と言うものがあり、法定業務が多い部署は残業が少なく、任意業務が多い部署は残業が多くなる傾向があります。
法定業務と任意業務を簡単に説明すると、
- 法定業務…法律や条例に書いてあるので、必ずしなければならない業務
→例1:住民から住民票をくださいと言われたら渡す。
→例2:住民の収入に応じて、税金を課税する。 - 任意業務…首長(市長や知事)が、するかどうか決めていい業務(企画・相談)
→例1:〇〇という、イベントを開催してほしい。
→例2:育児や福祉で困っているから、なんとかしてほしい。
という具合に分類することができます。
(法定業務)住民受付をしている部署の場合
日々、窓口に来た人たちに決められた書類を渡す(ルーティーン)業務をやっている人たちが、普段、残業をする必要性はほとんどありません。しかし、以下のような繁忙期には膨大な作業量が発生することとなり、残業を生じさせる原因となります。
(例)閑散期には、人が不要だが繁忙期に処理業務量が膨大なため、残業が発生
- 「住民課であれば、引っ越しシーズンの4月に数千、数万人分の入力作業」
- 「課税課であれば、課税シーズンの6~7月に数万、数十万人分の納税通知書の作成」
(任意業務)企画・相談を主業務としている部署の場合
お祭りやイベント、相談受付といった任意業務は、自治体の裁量でほとんどの仕事をなくすことができます。しかし「法律に書いていない=やらなくてもいい」と捉えられる一方で「やってはいけないとは、どこにも書いていない」とも受け取ることができ、偉い人(首長や議員、地元の有力者)の思い付きや利権に沿って、振り回されることで、残業を生じさせる原因となります。
(例)イベントや期限の締切が厳しい中で、急遽、調整業務が発生
- 会議で決定したのちに「イベント内で、新しいブースを構えてはどうか」
- 〇〇で困っている人がいるから「話を聞いてあげてほしい」
非正規職員には残業がないの?
こちらも部署によるところですが、地方公務員の非正規職員だからという理由で残業が免除されることはありません。定型業務(問い合わせ対応、郵便づくり)が多い地方公務員だからこそ残業を命じられることもあるでしょう。
また、国家公務員の非正規職員も残業はありますが、地方公務員と比較して定型業務が少ないためか夜遅くまで残業をしているのを私は見たことはありません。※秘書業務を除く。
2.地方公務員の残業代は出るが、国家公務員は出ない!?
端的に言うと、地方公務員は「申請した分の残業代は出る」、国家公務員は「申請をした分の残業代はでません(2021年1月の河野太郎規制改革担当大臣の発言により大きく改善)」。※2021年河野太郎規制改革担当発言参考(①、②)
しかし、その実態を正確に説明すれば「地方公務員は、申請するな。時間外はするな。」「国家公務員は、申請しても無駄だ。」と言ったところです。
地方公務員の残業代の弊害
まず初めに申しておきますと、私が所属していた役所は「残業した分は、すべて申請することが可能で残業代は満額支給」でした。
一方で、他の地方公務員に聞くと「月の残業が45時間を超えたら管理職責任を問われるため、申請できない※36協定の規定」「残業を減らす手段は提案しないが、残業を減らすよう管理職から指示される※残業がつけられない」といった理不尽な方法で残業抑制が行われるケースがあるようです。
もちろん、地方公務員に限った話ではありませんので、民間企業では横行しているケースもあるかもしれません。また、この「無申請」の弊害として、前述の月の平均残業時間15~20時間の実態が過少に集計されていると言えます。
そのため、そのような地方公共団体もある・月最低15時間は残業がある程度にとどめておいていただければと思います。
国家公務員の残業代の弊害
国家公務員となり、初めに驚いたのは申請したハズの残業時間と給与明細の残業時間が全く異なることでした。誰がこんな修正したんだ…と憎しみさえ覚えましたが、府省庁ごとに定率で削減する仕組みがあるようです(※○○省は、×0.5、△△省は×0.4など)。そのためなのか、残業申請はシステムや機械管理ではなく紙管理です…。
しかし、2021年1月に河野太郎大臣(当時、規制改革担当大臣)が、「データを見る限り、サービス残業がないとはおよそ考えられない」「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」と表明したことから、翌月より、私の所属していた組織は突然満額支給になりました。
(とはいえ、隠れて支給率を下げている府省庁もあるようですし、一概には言えませんが…。国交省、厚労省、内閣官房、内閣府は大丈夫だと聞きました。)
3.まとめ(公務員の残業の実態と残業代)
地方公務員の月平均残業時間は「13.2時間」で、国家公務員の月平均残業時間は「30.0時間」とされていますが、どちらも「平均」であるため部署によって実態は全く異なります。
しかし、どちらの場合も過少申請やサービス残業が横行しているので、実態を的確にとらえているわけではありませんから、残業はもっと行われてます。
さらに、残業代支給の実態も様々ですが、私の地方公務員時代には、残業代はすべてもらえていましたし、最近は国家公務員の残業代にメスが入ったことで改善されましたので、環境はよくなっていっていると思ってよいと思います。
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